遠近 ochi-cochi

逍遥録

sabi

朝早く近所のツッちゃんと、ユウちゃん、が迎えに来る。

「りょうくん!おっはよっ!」「りゃ〜おぉ〜か〜ん!!」

ボクをを呼ぶのに、そんなに絶叫しなくても聞こえてるよ・・

虚弱な少年りょうくんは障子や壁や下駄箱にしがみついて玄関へ。

「は〜い」小さな声は外の友達には届かない・・

「りょ〜〜〜くんっ!」わかった、わかったよ、聞こえてるよ。

すかさず母親が玄関のドアを開けて「おはよう。ちょっと待ってね」

そうなると友達もさっきまでの威勢は何処へやら・・

小さな声で「おはようございます・・あの・・ラジオ体操・・」

のこのこ靴を履いて、ふらふら出て行くと・・

後ろで母親が「よろしくね、気をつけてね」と言いながら、

ラジオ体操のカードを首にかけてくれた。

ツッちゃんと、ユウちゃん、は僕の顔を見て、

「りょう、顔・・真っ白やで、大丈夫か?」「ゆっくりでええで」

・・お世話かけます・・

やっとの思いで広場に着くとラジオ体操が始まる。

あ〜た〜ら〜しい朝が来た!希望の朝だ♬ うざい・・

そして、この歌が終わって、立っていられなくなる。

ペタッとその場に座り込むと、周りの大人がそっと寄り添ってくれる。

・・お世話かけます・・

調子のいい時は『腕を前に上げて背伸びの運動』をして座り込む。

むしろしない方がいいと気づいたのは、早かったよ。

なぜなら、周りの大人の心配そうな顔を見た時そう思ったから。

・・お世話かけます・・

結局ラジオ体操をぼんやり見学して、それでもハンコを押してくれる。

夏休みの終わり、一度もラジオ体操をしていないのに、

休んでばかりいたし、たどり着いても見学しかしていなかったけど・・

ツッちゃんと、ユウちゃん、町内の皆様の温情により、鉛筆をもらった。

・・お世話かけます・・

今でもお世話かけてます・・

 

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