遠近 ochi-cochi

逍遥録

Azuki

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猫である。 

ご存知、小豆である。

帰郷の折りである。

呼鈴と、玄関のドアーを開閉する音に気付き、

小生の姿を見つけると、徐に近寄り、

小々曲がった太い尻尾で足をスルリと撫でて出迎える。

もっぱら小生に興味があるわけではない。

子猫のようにじゃれて戯れる事も無い。

取り敢えず長男の表六玉が帰って来たのでお愛想って寸法だ。

もはや相当の老猫である故、達観しているのだろう。

実家に滞在している間も、特別小生を気にする様子も無いが、

いざ帰る段になると、玄関に置いてある椅子に座り、

身仕度を整え、靴ひもを結ぶ小生の姿を、黙って見ている姿は、

吽形の狛犬ならぬ、狛猫である。

少し首を斜に傾げ、内股で、その名残惜しい顔、誰に教わったのやら。

いつも見送り有り難う。

な、小豆。