足元に見つけた『錆びた孔』に気を取られて立ち止まった
孔の正体は歩道に立っていた道路標識の金属パイプの跡だろうか
道路整備によって不用になり根元から切断され錆び付き
切り残されて1センチばかり地面に突き出た部分を
ハンマーか何かで内側に叩き込んである
その周りのひび割れたコンクリートの窪みには
小さな雑草がしたたかな息吹きを見せている
拳も入らない程の 孔 の中は暗くて少し水が溜まっていて
そこにも小さな草の緑色が見えた
顔を近づけて孔の中を覗き込むと
自分の顔が映っていることにドキッとした
自分が誰かに覗かれたような気がした
小さな 孔 の中から小さな自分がコチラを見ていて
その背後には小さく切り取られた空が映っていた
目に焼きついた小さな 孔 の中の空は
見上げた空より明るくて優しい色に見えた