薄曇りの夜空に 後十三夜
171年ぶりだって言うから一生に一度っきりだと
きのうは楽しみにしていたのに
神戸だけ薄い雲が棚引いているらしい
おまけにぽつぽつ雨まで降っていて
もう日付が変わっているけどカメラを持って公園へ
暗い公園をひとり歩いていると少し心細い
さあカメラを月に向けるけど三脚が無いからブレる
そこでフェンスの柱にカメラを押し付けてシャッターを切る
でも結局こんな怪しい写真になった
あまり満足できなかったので面白くない気分になった
少し不貞腐れてベンチに座って月を見上げた
雲は途切れる気配を見せない
南から風が吹いていて潮の香りがする
海からの湿った空気が六甲山に当たり雲が生まれる
天気予報は明日もくもり
きょうはもう諦めるよりほか仕方がないと思っていると
急に風が紅葉した樹々をざざざぁーと揺らした
うぅぅーっと風を切る音も宙を走る
黒い空より黒い樹の影がお化けに見える
ちょっと怖くなって帰る事にした
歩き出すボクの背後からだけ風の騒ぐ音がする
背中に何かが触って来る様な錯覚にカラダがおびえる
ううって声が出そうになるのを我慢して歩く
怖いけど歩く
だって一度走り出したらもっと怖くなるから
夜の闇はボクが怖くなって逃げ出すのを見たいんだ
退屈しのぎにオドロしい音をたててボクを試しているんだ
ようよう公園を出て幹線道路まで来ると
背中が冷たくて硬くなっていた
用もないのにコンビニに入って牛乳を買った
帰宅して温かいミルクティーを飲んだ
ようやく血液が流れ出しカラダが熱を帯びた
もう夜の公園には行かない事にした
こんな夜はミルクティーに限る